2023.10.07 労災保険

建設事業者なら知っておきたい【労災事故】について!

みょうが行政書士・社労士事務所では、
建設業許可の法改正や従業員雇⽤にまつわる労務情報等をお届けして参ります。

さて今回は、貴社の従業員が業務中や通勤時に被災した場合の労災事故について、事業主としてどのように対処していけば良いのか?

建設現場での事故責任の所在や交通事故等の相⼿⽅が絡んだ場合の対処等々。

貴社の従業員への安全配慮義務の⼤切さなど、基本に⽴ち返って考える機会として頂ければ幸いです。

建設現場での事故

先⽉、東京駅前の再開発ビルの建設現場で、重さ15トンの鉄⾻が2メートル落下し、作業員5名が死傷するという重⼤な労災事故の報道がありました。

関係者間で原因究明が急がれていることと思います。

建設現場では、⼯事の規模により、⼯事に関係する業者が複数存在することがあります。
そのような状況で事故が起きた場合には、責任の所在が複雑・曖昧になる恐れがあります。

下請会社で起こった労災事故

事業主(使⽤者)は、従業員(労働者)に対して労働契約上の義務として「安全配慮義務」を負っています(労働契約法5条)。

元請会社と下請会社の従業員の間には通常はこの安全配慮義務はありません。
ただし、建設現場においては実質的な作業内容が元請会社の指揮監督の下に⾏われていたという場合、特別な“社会的接触関係”が認められ、元請会社に安全配慮義務が課せられることになります。

また、元請会社は「使⽤者責任」も負っています。これは、⾃社の従業員が第三者に与えた損害を賠償する責任のことですが、元請会社が下請会社との関係で、下請会社が元請会社の指⽰の下に仕事を完成させているといえる場合、両者は指揮監督関係にあるといえ、使⽤者責任が⽣じます。

また、建設現場では事業が1次、2次、3次と数次の請負で⾏われていることが多く、災害補償に関しては「元請⼈を使⽤者とみなす」と法定されています(労働基準法第87条)。つまり、元請会社の労災保険から給付を受けることになるのです。

労災保険による給付の種類

まずは「療養補償給付」、いわゆる治療費を受けることになります

療養補償給付は治療の現物給付であり、労災保険指定病院で治療を受ける場合には治療費はかかりません。
ただし、労災指定病院以外で受診した場合、⼀時的に被災労働者が費⽤を⽀払い、その額を労災請求した後、現⾦⽀給されることになります。

次に、業務災害等により賃⾦を受けることが出来ない期間の賃⾦を補償する制度として「休業補償給付」が⼀定の要件の下で⽀給されることになります。

交通事故等の場合

従業員が業務中の移動や通勤途上で交通事故に遭った場合等、第三者の⾏為などによって⽣じたものを「第三者⾏為災害」といいます。この場合、被災した従業員は第三者に対する損害賠償請求権と労災保険に対する給付請求権を取得することになります。

ただし、同⼀の事由について両者から重複して補償を受けるとなると実際の損害額より多くの⽀払いを受けることになり不合理な結果となります。よって、この場合、労災保険の給付と⺠事損害賠償との⽀給調整が⾏われることになります。(労災保険「第三者⾏為災害のしおり」ご参照)

注意点▶第三者(相⼿⽅)との⽰談について

不⽤意に⽰談をすると労災保険給付を受けられなくなったり、すでに受けていた労災保険給付を回収されたりなど、思わぬ損失を被る場合があります。労災保険を請求する際には「念書」の提出を求められ、⽰談について注意を促されます。不幸な事故が起きないよう使⽤者として安全研修などを⾏うことも⼤変重要ですね。


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