建設業許可の法改正や従業員雇用にまつわる労務情報等をお届けして参ります。
今回は、財務にまつわる指標である「流動比率」についてまとめてみました。
公共工事の入札に参加する際にも重要視される指標のひとつです。ぜひご活用下さい。
流動比率とは
流動比率とは、企業の短期的な支払能力を見る指標であり、次のように算出することができます。
流動資産 ÷ 流動負債 × 100
流動資産と流動負債
流動資産とは、1年以内にお金にする(換金する・回収する)ことを目的としているものを指し、現金預金、受取手形、売掛金、棚卸資産などが該当します。
流動負債とは、1年以内に返済しなくてはならないものを指し、支払手形、買掛金、短期借入金などが該当します。
流動比率の目安
業種や業態によって比率にバラツキが出ますが、流動比率の目標値は200%以上、最低でも150%以上が望ましいといわれています。
ただし、流動比率が目標値以上であっても安心できないケースがあります。
例えば…
- 流動資産の売掛金の中に不良債権がある。
- 棚卸資産の中に不良在庫があり、現金化が困難で当面の支払いに充てることができない…
したがって、流動資産の中に不良債権や不良在庫が多い場合、実際の流動比率はもっと低くなります。
そこで、流動比率の改善方法の一例として、次のような方法が挙げられます。
- 固定資産を売却し、現金を増やす
- 増資により資本を増やし、現金を増やす
産業別の流動比率
中小企業庁が昨年7月に発表した資料※から、産業別に中小企業(法人企業)の流動比率を算出してまとめると、下表のとおりです。
産業別の流動比率(%) | 2020年度 | 2021年度 |
---|---|---|
建設業 | 200.1 | 207.5 |
製造業 | 198.7 | 203.8 |
情報通信業 | 245.5 | 276.5 |
運輸業、郵便業 | 180.5 | 182.3 |
卸売業 | 172.9 | 168.2 |
小売業 | 160.7 | 177.2 |
不動産業、物品賃貸業 | 176.9 | 193.7 |
学術研究、専門・技術サービス業 | 189.2 | 175.1 |
宿泊業、飲食サービス業 | 154.9 | 153.4 |
生活関連サービス業、娯楽業 | 172.0 | 208.1 |
他に分類されないサービス業 | 183.0 | 196.3 |
2年度ともにすべての産業が150%を超えています。
2021年度の産業別では、情報通信業が276.5%で最も高くなりました。生活関連サービス業、娯楽業、建設業、製造業も200%を超えています。
貴社の流動比率と比較されてはいかがでしょうか。
※中小企業庁「令和4年中小企業実態基本調査」
全国の中小企業から選出した約11万社を対象とした調査です。ここでの流動資産は現金・預金+受取手形・売掛金+棚卸資産+その他の流動資産、流動負債は支払手形・買掛金+短期借入金(金融機関)+短期借入金(金融機関以外)+その他の流動負債です。
改めまして、財務にまつわる指標である「流動比率」は、公共工事の入札に参加する際にも重要視される指標のひとつですので、ぜひご活用下さい。